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長崎地方裁判所島原支部 昭和31年(ワ)48号 判決

原告

右代表者法務大臣

牧野良三

福岡市浜町二十二番地福岡法務局

右指定代理人総務部長

今井文雄

長崎市本博多町十三番地長崎地方法務局

総務課長 吉武鷹敏

長崎県南高来郡有家町戊千四百四十八番地

被告

小川寿瑞

右当事者間の昭和三十一年(ワ)第四八号貸金請求事件について、当裁判所は次の通り判決する。

主文

被告は原告に対し金三十八万円及びこれに対する昭和三十一年四月一日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告指定代理人等は、主文と同旨の判決を求むる旨申立て、その請求原因として、

一  長崎県南高来郡西有家町丙百十八番地訴外渡辺昇は昭和三十一年三月二十七日現在において、昭和二十八年分所得税二十七万五千九百八十五円、同無申告加算税二万六千六百円、昭和二十九年分所得税三十七万三千一百円、昭和三十年分所得税十一万六千一百六十円、利子税二十一万四千四百二十八円、延滞加算税五万五千四百七十円、合計百六万一千七百四十三円を滞納しているものである。

二  みぎ訴外渡辺昇は被告に対し、昭和三十一年三月二十七日現在において弁済期の経過した貸金三十八万円の債権を有している。

三  よつて福岡国税局収税官吏は昭和三十一年三月二十七日国税徴収法第十条及び第二十三条の一第一項にもとずき前項記載の債権を差押え同日之を債務者に通知し、同月末日までに支払うよう請求した。

四  その後前記滞納税金については確定申告によつて五万四百六十円減額となつたが、訴外渡辺昇は前記滞納税金について金三十八万円を納付したのみで残額金六十三万一千二百八十三円を納付せず、また被告も支払いをなさないので本訴に及ぶ次第である。

と述べ

証拠として

甲第一、第二号証を提出し、証人北田顕一の訊問を求めた。

被告は請求棄却の判決を求め、

答弁として

原告の主張事実中訴外渡辺昇が原告主張の如き税金滞納の事実あること、福岡国税局収税官吏から原告主張の如き債権の差押あり、同日その旨被告に対し通知あり、且つその支払の請求があつたことは、いずれもこれを認めるが、被告は右渡辺昇に対し原告主張の如き債務負担の事実がない、その余の原告主張事実は不知と述べ

証拠について

甲第一号証は成立を認め甲第二号証は不知と答えた。

理由

訴外渡辺昇が原告主張の如き税金の滞納あること、福岡国税局収税官吏が原告主張の日に同訴外人の被告に対して有している昭和三十一年三月二十七日現在弁済期に達している貸金債権三十八万円につきその差押をなし、同日これを被告に通知したことについては当事者間に争のないところであるが、被告は右訴外人に対して原告主張の如き債務負担の事実を争うところであるから、この点について按ずるに、成立に争のない甲第一号証の記載と証人北田顕一の供述及び同証人の供述によつて真正に成立したものと認める甲第二号証の記載に徴すると、被告は右訴外人に対し原告主張の様な金三十八万円の債務を負担している事実を認定することができる。そうだとすると福岡国税局収税官吏が原告主張の日にその主張の如く右訴外人の被告に対する債権の差押をなし、これを同日被告に対し通知したことは前記認定の通り争のないところであり、又右通知と同時に同月末日迄にその支払をなすべき旨請求ありたるに拘らず、被告は未だこれが支払をなしていないことは弁論の全旨に徴し明白であるから被告は原告に対しその支払義務あるは当然である。

よつて原告の本請求を理由ありとして認容し、訴訟費用の負担の点について民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 田中英寛)

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